さびしすぎてレズ風俗にいきましたレポ 永田カビ著

book-offで110円で売っていたのです。(もっと高く売ってもいい気がするけれど……)立ち読みしていたのですが凄く面白くて買ってしまいました。エッセイ漫画ですね。著者の漫画を描き始めるきっかけであったり、アルバイト時代の経験などが綴られています。其の過程の中で、自分自身を漫画の題材にすることが一番ぴったりくる方法であると著者は気付いたそうです。自分自身を漫画にするのってなかなか勇気がある行動だと思います。プラスして十分な内面描写がされており、どちらかと言えば失敗の多いエピソードを在りのまま曝け出すことが出来るのが著者の魅力なのだと思います。スーパーのアルバイト時代に、余り物のカップラーメンの麺を乾燥したままバリバリと食べていたエピソードが一番衝撃的でした。(当時は過食症であったらしいです。)
タイトルが「レズ風俗」ですが其の表題はあまり関係の無い要素だと思います。単に著者の体験の一つがレズ風俗であったというだけで……。外連味なく脚色なく、まっさらに自分の生活や内面性を描ける「明け透け」さが此の漫画の特徴です。
著者は自分が他人に心を開いていないことをしばしば認識します。此の点は私の性質ともlinkしている部分があって……。私の場合、壁の作り方が巧くなっただけで、自他の間の距離は一向に狭まっていない気がします。心の底の部分で人と繋がりたいと強く願いながら自分から退いているような……。そんな違和感を未だに抱きます。だから其の「弱弱しさ」を広く社会に発信して認められた永田カビさんは偉大だと思うのです。書いてある内容が、一般的なエッセイ漫画よりも深く抉ったものになっていますよね。とても力に溢れています。とっても好きな漫画です。
2023/8/17

ホクサイと飯さえあれば 鈴木小波著

此れまた好きな漫画。作者さんの料理に関する出来事を1話完結で綴っていきます。「旨い料理が食べれればすべて宜しいなのだ。」至上主義の漫画。「ホクサイ」というのは作者がいつも持ち歩いているお気に入りの人形のことです。鈴木小波さんは他の作品に於いても料理を主題にすることが多いので、元々そういった方向に興味がある方なのでしょう。前向きなセリフが多くて、こんな風に日常の機微を捉えて面白がれるって素敵だなって思うのです。私もガサツですが料理をすることは好きで。ガサツですが……。自分で料理を作って食べるということに生活の基盤が在る気がするから。一人暮らし特有の緊張感と寂しさも何処か含まれている気がして其れも結構好きだったりする。全9巻なんだけどもっと続いてほしかったな……。主人公の山田ブンの少しずつできることが増えて行く姿に心を励まされます。
「オレが好きな話を誰も描いてくれないから自分で好きなモノを描こうと思ったんだよね。」
「ないなら作る。好きなモノを描く。」
「描いてみようかな。」
2023/8/24

ぼのぼの いがらしみきお著

時間が穏やかに流れて行く雰囲気が好きで。静かにそして豊かに時は移ろいます。4コマ漫画なんだけど、4コマ漫画の落とし方ではなく。起承転結の「転」が無いような感じ。「ああ、木から木の葉が落ちそうだよ。」→「木から木の葉が落ちたよ。」みたいなありきたりな展開を当たり前に描いているのが此の漫画の特徴です。だから読んでいて私たちは安心するのです。この漫画の世界には時間を無駄遣いできる余白や物事が変化しなくても許されるゆとりが含まれています。
映画や漫画、延いてはコンテンツ全般に於ける日常の切り取り方は異常性という観点に基づいてです。変化を大きく拡大して緩急に富む娯楽作品を作り上げます。一方で『ぼのぼの』は変化しない部分に重きを置いたのですね。ベルクソンが確か「自然に対して私たちが安らぎを得るのは、先が予測できるからです。」というようなことを言っていて、そんな安心感があるのですね。あまり難しいことを考えなくても良いんだという気にさせてくれます。
「許して、忘れる。」←『ぼのぼの』のセリフから
2023/12/4